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活動記録

第1回 ESMO/JSCO フェローシッププログラムに参加してきました

2018年10月19日から11月2日まで、「第1回 ESMO/JSCO フェローシッププログラム」に参加してきました。
このプログラムは、日本癌治療学会(JSCO)の若手研究者育成プログラムのひとつとして、今年から新たに始まりました。日本癌治療学会では、すでに2015年から米国の専門家を紹介し、継続して助言・指導を受ける機会を提供するプログラムが展開されていました。その後欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology, ESMO)の全面的な協力を得て、2018年から欧州でのプログラムが開始となりました。第1回という記念すべき会に若手フェローとしてプログラム参加の機会を与えて頂き、深く感謝申し上げます。
本年のプログラムでは、ドイツ ミュンヘンで開催されるESMO学術集会に参加した後、ESMOから欧州の有名研究施設・病院としてイギリス ロンドンのRoyal Marsden Hospitalをご紹介頂き、訪問の機会を頂きました。メンターとしてRoyal Marsden病院のConsultant Medical Oncologistであり、またthe ESMO Executive Boardおよびthe ESMO Women foe Oncology CommitteeのメンバーでもあるSusana Banerjee先生をご紹介頂きました。

最初にESMO 2018に参加するため、ドイツのミュンヘンへと向かいました。学会は10月19日から23日という日程で、ミュンヘン中央駅から地下鉄で25分程度のところにあるメッセミュンヘンで開催されました。参加者はヨーロッパ、米国を中心に2万人以上であり、まずはその規模に圧倒されました。消化器分野を中心に、化学療法や分子標的治療、そして免疫治療について、総論的な内容から最新の臨床試験の結果まで幅広く知識を得ることができました。また医学生と若手医師のための教育セッションに参加し、ヨーロッパの医学教育や研修プログラムについて学ぶとともに、ポスター会場で実際のポスターを前に、いかに興味を持ってもらえるポスターを作るかについて皆で議論したことは、貴重な体験でした。

  • ESMO学会会場 メッセミュンヘン
    ESMO学会会場 メッセミュンヘン
  • 昼食会場
    昼食会場
  • 会場内の様子
    会場内の様子
  • 教育セッション
    教育セッション

学会最終日は午前中ですべてのセッションが終了したため、午後はミュンヘン市内の観光ができました。ミュンヘンはドイツで3番目に大きな都市です。市の中心部にはマリエン広場があり、その周りには市庁舎などの歴史的な建築物が数多くあり、とても魅力的でした。旧バイエルン王国の王宮ミュンヘンレジデンツには豪華な装飾を施された部屋がいくつもあり、王家の宝物がたくさん展示されていました。ミュンヘンはビールの祭典オクトーバーフェストが開催されることでも有名ですが、残念ながら10月初旬には終わってしまっていました。

ミュンヘン マリエン広場と市庁舎
ミュンヘン マリエン広場と市庁舎
  • レジデンツ1
    レジデンツ
  • レジデンツ2
    レジデンツ

10月24日にはロンドンに移動し、25日からRoyal Marsden病院での研修が始まりました。メンターのBanerjee先生は婦人科癌専門のMedical Oncologistであり、今回のESMO 2018 プレスリリースにおいて、進行卵巣癌に対するオラパリブ(PARP inhibitor)維持療法の有用性についてご報告されるなど、女性リーダーとして大変ご活躍されている先生です(写真はESMO 2018 HPより)。今回の研修では「女性のリーダーシップ」をテーマとしており、Banerjee先生が実際の臨床、研究の場で婦人科のリーダーとしてご活躍されている姿から、女性リーダーとしての在り方を学びました。また英国と日本の医療や医学教育システムの違いや、女性医師の働き方について多くのお話をさせて頂きました。実際に先生のprivate clinicでは、世界各地から来院された多くの患者さんの診察に同席させて頂き、言葉や文化の異なる中でのコミュニケーションの方法や、診療の進め方など多くを学ばせて頂きました。
Banerjee先生には、滞在中に多くの女性リーダーの先生方をご紹介頂きました。婦人科分野では、腫瘍内科のGeorge先生、放射線科のTaylor先生、外科のNobbenhuis先生のもとで、ミーティングや外来、放射線治療の見学、また手術見学をさせて頂きました。多くの留学生や他施設からの研修医師を受け入れており、教育の体制についても学ばせて頂きました。また消化器外科医師ということでご配慮頂き、消化器内科のStarling先生や消化器外科の先生方にもご紹介頂きました。肝胆膵外科分野ではKhan先生のもとで、肝切除のrobotic surgeryを見学させて頂きました。週1回開催される消化器Cancer boardでは、サンドイッチやフルーツをつまみながら白熱した議論がなされており、プレゼンテーションの方法や治療適応など多くを学びました。

Royal Marsden Hospital
Royal Marsden Hospital
メンター Banerjee先生
メンター Banerjee先生
  • 放射線科 Taylor先生
    放射線科 Taylor先生
  • 外科 Nobbenhuis先生
    外科 Nobbenhuis先生

ロンドン滞在中、婦人科のMurali先生からは観光のリストを頂き、土日を利用してロンドン各地を観光することができました。バッキンガム宮殿、ビックベンをはじめ、ウェストミンスター寺院やケンジントン宮殿など、有名な素晴らしい建築物を見学することができました。また病院のあるサウスケンジントンにはロンドン自然史博物館やヴィクトリア&アルバート博物館などの人気博物館があり、迫力のある動物の剥製や美しい工芸品などを見学することができました。食事ではイギリス名物として有名なフィッシュアンドチップスはもちろん、念願のアフタヌーンティーも海外研修ならではの貴重な体験でした。

  • ウェストミンスター寺院
    ウェストミンスター寺院
  • フィッシュアンドチップス
    フィッシュアンドチップス
  • アフタヌーンティー
    アフタヌーンティー
  • ケンジントン宮殿
    ケンジントン宮殿
ロンドン自然史博物館
ロンドン自然史博物館

今回の研修では多くの先生方と出会い、貴重な経験をさせて頂きました。特に多くの女性の先生方がリーダーとして活躍されている場を目の当たりにし、大変刺激を受けました。今回得た経験を今後の診療や自身のキャリア形成に活かしていきたいと思います。
最後になりますが、このような機会を与えて頂いた調 教授に深く感謝申し上げます。またプログラム参加にあたりサポートして頂きました日本癌治療学会およびESMOのスタッフの皆様、そして肝胆膵外科の皆様に心より感謝申し上げます。

塚越 真梨子