当科についてAbout

2017年の臨床実績

群馬大学肝胆膵外科における
手術症例数の変遷
群馬大学肝胆膵外科における手術症例数の変遷 グラフ
群馬大学肝胆膵外科における
高難度手術症例数の変遷
群馬大学肝胆膵外科における高難度手術症例数の変遷 グラフ
群馬大学における肝切除術式と出血量
群馬大学肝胆膵外科における肝切除術式と出血量 グラフ

私は2015年の11月より群馬大学へ肝胆膵外科の教授として赴任いたしました。2015年11月より当科では415例の手術が行われました。2016年には173例、2017年には219例の手術症例数でした。2016年には2015年に比べ膵切除や肝切除、その他の手術がすべて増加していました。

これらの中で、日本肝胆膵外科学会が認定する高度な手術技術を要する高難度手術が顕著に増加していることがわかります。具体的には2015年32例、2016年67例、2017年には90例でした。特に膵全摘、門脈、動脈などの主要血管の切除再建をともなう膵切除、肝門部胆管癌に対する肝葉切除+胆道切除再建、などの特に高度な技術を必要とする手術が増加しています。2017年の90例の高難度手術における術後の在院死亡はありませんでした。

肝切除について出血量を術式ごとに算出してみました。肝臓は毎分1.2Lの血流が流れる血流豊富な臓器です。肝切除は出血との戦いでした。したがって、肝臓を切除する上では如何に出血を減少させるかが安全な肝切除の上では鍵となります。

2015年11月からの連続184例の肝切除の平均出血量は321mlでした。献血1回で400ml採血を行うことはよく知られていますが、400ml以内の出血であれば輸血の必要はないことから、肝切除における平均出血量が400mlを下回っていることは一流の施設である証と考えられています。手術の様々な工夫によって出血量を最小限にとどめることで手術の安全性を担保できていると考えます。この他、膵頭十二指腸切除では動脈を先行処理する方法を導入し、出血を低減するとともに膵管空腸吻合を工夫することで膵液漏の頻度が減少しており、膵切除の安全性も向上しています。

2017年最後の手術はたいへん難しい肝切除を緊急で行いました。12月25日に紹介となった患者さんですが、16cmの肝癌が肝門部から足側に突出しており、破裂の危険性が高いと考えました。年末から正月に破裂すれば生命の危険があると判断し、麻酔科やICU、病棟にもご協力いただき、2017年12月28日の仕事収めの日に凖急患で切除を行いました。腫瘍は左右のグリソン一次分枝を広範に圧迫しており、たいへん難しい手術でしたが、みなさんのご協力のお蔭で無事、予定通り手術は終了し、術後の経過は良好です。

来年も患者さん第一という基本方針を忘れず、チームワークを大切にして質の高い診療を続けてまいりますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。

(文責:調  憲)